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大阪地方裁判所 昭和30年(行)64号 判決

大阪市浪速区反物町一三三七番地

原告

株式会社 白良荘

右代表取締役

林数一

右訴訟代理人弁護士

沢克己

大阪市浪速区船出町二丁目

被告

浪速税務署長

島岡宗一

右指定代理人検事

麻植福雄

右指定代理人大蔵事務官

榊原二郎

辻本勇

小林喜継

右当事者間の法人税等更正処分無効確認事件について当裁判所は次の通り判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「原告の自昭和二六年四月一日至同年九月三〇日、自昭和二六年一〇月一日至昭和二七年三月三一日、自昭和二七年四年一日至同年九月三〇日、自昭和二七年一〇月一日至昭和二八年三月三一日、及び自昭和二八年四月一日至同年九月三〇日の各事業年度の申告所得金額、法人税額について、被告が昭和二九年一二月一〇日になした更正(又は決定)は、無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、

「(一) 被告は、昭和二九年一二月一〇日、原告の左記各事業年度における所得金額及び法人税額をつぎの通り更正(又は決定)し、数日後これを原告に通知した。

(1)  自昭和二六年四月一日 至同年九月三〇日事業年度

所得金額 四、一七四、〇〇〇円

法人税額 一、五五三、一一〇円

(2)  自昭和二六年一〇月一日 至昭和二七年三月三一日事業年度

所得金額 一、五三二、二〇〇円

法人税額 七四六、八五〇円

(3)  自昭和二七年四月一日 至同年九月三〇日事業年度

所得金額 二、三二〇、二〇〇円

法人税額 一、〇八〇、九二〇円

(4)  自昭和二七年一〇月一日 至昭和二八年三月三一日事業年度

所得金額 二、三五二、八〇〇円

法人税額 一、〇一四、六三〇円

(5)  自昭和二八年四月一日 至同年九月三〇日事業年度

所得金額 二、六八七、七〇〇円

法人税額 一、一二八、八三〇円

(二) しかし、原告は、前項(1)記載の事業年度において、金一、九八五、三四一円四二銭の所得(法人税額金八一一、九三〇円)があつたのみで、(2)乃至(5)記載の各事業年度においては、いずれも欠損となつているから、被告のした処分はいずれも無効である。

法人税は法人の所得に対し賦課されるべきものであるのに、本件処分は存在しない所得に法人税を賦課したものであるから当然に無効である。

よつて本件処分の無効確認を求めるため本訴に及んだ。」

と述べた。

被告指定代理人は、本案前の答弁として、「原告の訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、その理由として、

「原告の本訴は、実質的には行政事件訴訟特例法第二条に規定する行政処分の取消又は変更を求める訴に外ならない。原告は昭和三〇年二月二一日大阪国税局長に対し本件処分について審査の請求をしたが、同局長は、法人税第三五条第一項に定める期間を経過して提出されたものとして、却下の決定をした。従つて原告の本訴は同条に規定する訴願前置を欠いているから、却下さるべきである。」

と述べ、

本案の答弁として

「原告主張の事実中、(一)記載の事実は認めるがその余の事実は争う。

本件処分には何等違法の点はない。

仮りに、本件処分が存在しない所得を誤つて存在するものと認定した違法の行政処分であるとするも、その違法は取消原因たるに止まり当然無効を来すものではない。けだし、行政処分の無効を来すものではない。

けだし、行政処分の無効原因たる瑕疵は単に法規に違反したというだけでなく、その瑕疵が重大かつ明白であることを要すると解すべきところ、法人税等の課税標準たる所得の存否は外観上明白でなくこれが存否は税務署長の認定にまたねばならないものだからである。」

と述べた。

理由

行政処分の無効確認を求める訴については、行政事件訴訟特例法第二条の訴願前置の規定の適用はないものと解するのを相当とするから、被告の本案前の主張は採用できない。

よつて本案について考える。

原告主張の事実中(一)記載の事実は、当事者間に争いがない。

行政処分は、その瑕疵が重大且つ明白である場合に限り当然無効となるものと解するのを相当とするところ、被告が本件処分の無効原因として主張している瑕疵は、ここにいわゆる重大且つ明白なる瑕疵といい得ないこと明かである。

よつて原告の本訴請求は失当としてこれを棄却し訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 平峯隆 裁判官 小西勝 裁判官 首藤武兵)

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